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広島高等裁判所 昭和24年(う)383号 判決 1950年3月06日

被告人

桑原琢己

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人藤田若水の控訴趣意第一点について。

原審第一回公判調書によれば第一回公判の際主任弁護人より現場に同席していた者がおるのでその状況の詳細を立証するため大中繁人、被害者並遺家族に対し慰藉賠償等万全の方法を取つておる事実を立証するため桑原芳一、被告人の平素の性格、家庭の環境及び將來の保証等を立証するため中野信也を証人として申請したのに対し原審裁判所は証人桑原芳一の証拠調をする旨の決定を宣し次で在廷している同証人の尋問を行い他の証人の申請についてはその採否を留保し当日の公判を終つておる事実が認められそしてその後の原審公判調書によれば右留保の証人についてはその後採否について何等決定もしないで結審し判決をしておる事実が認められるのである。大中繁人、中野信也の証人申請について採否の決定をしないで結審したことは刑事訴訟法第二九八條及び刑事訴訟規則第一九〇條に違反する手続と云はねばならぬ。然し原審公判調書によれば弁護人が申請した証人大中繁人により立証しようとした犯行の際の状況については大中繁人の司法警察員に対する供述調書(第一、二回)大中繁人の檢察事務官に対する第一回供述調書、豊島宝一の司法警察員に対する第一回供述調書、豊島宝一の檢察事務官に対する第一回供述調書、被害者沖本実の司法警察員に対する供述調書の取調が行われており証人中野信也により立証しようとした被告人の性格家庭の環境及び將來の保証については被告人の父親である桑原芳一が証人として原審で詳細述べておるのでこれ等の証拠により弁護人が証人大中繁人同中野信也の尋問により立証しようとする情状の点は詳細公判廷に現れており從つて原審が判決するに当つて十分考慮しておるのであるから、たとえ原審公判手続に大中繁人、中野信也の証人申請について採否の決定をしなかつた法令違反があるもその違反は判決に影響を及ぼすものと云うを得ないので論旨は採用しない。

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